橙(だいだい) 生活を彩る色
- KOJI Nishimura
- 2月28日
- 読了時間: 3分
更新日:5 日前
冬の果実・橙(だいだい)の皮の色、朝焼けや夕焼けの温かな光、秋に色づく葉。
私たちの暮らしのなかで、ふと目にする「橙色(だいだいいろ)」は、ただ鮮やかなだけではない、どこか安心感と親しみを感じさせる色です。

日本独特の色彩表現である「橙色」について、その由来や特徴、一般的なオレンジ色との違いを紐解きながら、日々の暮らしに寄り添う“橙色の力”について考えてみたいと思います。
橙色という色の由来
「橙」という果実から生まれた色
橙色の名前は、柑橘類の一種である「橙(だいだい)」という果物に由来しています。
橙は、冬でも実が落ちず、年を越して次の年にも実ることから、「代々続く」「家系繁栄」を象徴する縁起の良い果実とされてきました。
その橙の熟した果皮の色、温かみのある深いオレンジ色が、「橙色」という日本独自の色名となったのです。
平安時代から伝わる伝統色
橙色は、平安時代から存在する日本の伝統色のひとつです。当時は、橙草(だいだいそう)や紅花などから染料を得て、衣服や装飾品に使われていました。

特に貴族たちは、四季の移ろいに合わせて衣服の色を変える「襲(かさね)の色目」と呼ばれる配色美を重んじ、橙色も秋冬の色として大切に扱われていました。
橙色と一般的なオレンジ色との違い
色味とニュアンスの違い
一般的な「オレンジ色」は、鮮やかで明るく、やや黄色寄りのイメージが強い色です。
これに対して「橙色」は、オレンジよりもやや赤みを帯びた、落ち着きのある暖色系。
日本の伝統色としての橙色は、単にビビッドな元気さを象徴するのではなく、成熟した果実のような「熟成」「温もり」「生命力」を感じさせる色合いなのです。
自然と調和する色
橙色は、日本の四季や自然の色彩と非常に相性が良い色でもあります。紅葉する山々、収穫期を迎えた田畑、冬の低い陽射し。
自然界のさまざまな場面で、橙色は控えめながらもしっかりとした存在感を放ち、私たちの目をやさしく癒してくれます。
橙色が心に与える影響
元気を与え、心を開く色
色彩心理学において、橙色は「活力」「社交性」「親しみやすさ」を象徴する色とされています。見るだけで気持ちが明るくなり、自然と人との距離を縮めてくれる。それが橙色の力です。
特に寒い季節には、橙色の温もりが心身をやわらかく解きほぐし、孤独感や不安感をやさしく和らげてくれます。
安心感と幸福感を育む色
また、橙色は「自己肯定感」や「安心感」を高める効果もあります。
極端に主張しすぎない色合いだからこそ、見る人に穏やかな幸福感をもたらし、心を安定させてくれるのです。

暮らしのなかに橙色を取り入れることは、目立たないけれど確かな“心の支え”になるのかもしれません。
色は心の温かさ
「色は心を養う光である。」
ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin/フランス/画家/1848–1903)
ゴーギャンのこの言葉が示すように、橙色はまさに心にあたたかい光を届けてくれる色です。光そのものの色、太陽の色としての橙色の力は、私たちに生きる力そのものを思い出させてくれるのかもしれません。
生活を彩る橙色
橙色は、自然の中で育まれた、人の暮らしに最も寄り添ってきた色のひとつです。激しく主張するわけではなく、でも確かにそこにあって、目と心を温め続ける。
そんな橙色を、これからの日々のなかにも意識的に取り入れていきたい。そうすれば、季節の光や、命のぬくもりに、もっと素直に気づけるようになるかもしれません。
参考文献・参考資料
日本色彩学会「橙色に関する色彩文化研究」https://www.color-science.jp/research/daidai_color
日本伝統色事典(角川書店)https://www.kadokawa.co.jp/product/traditional_colors
ゴーギャン著『色彩の旅』 https://www.hakusuisha.co.jp/book/b268311.html
色彩心理学における暖色系の影響(東京大学 心理学部) https://www.u-tokyo.ac.jp/research/warmcolor_emotion