海のリズムに身を委ねて 心の波も穏やかに
- KOJI Nishimura
- 1月23日
- 読了時間: 3分
更新日:6 日前
何かと忙しない日々の中で、ふと心がざわついたり、不安の波に飲まれそうになることはありませんか?
そんなとき、私は海へと足を運びます。ただそこに座り、波の音に身をゆだねていると、心の奥深くでざわめいていた感情が、少しずつ静まっていくのを感じるのです。

海が奏でる“リズム”の力に焦点をあて、自然の揺らぎに身をゆだねることで心がどのように整えられていくのかについて綴ってみたいと思います。
海には“律動”がある
波のリズムが心をなだめる
海辺に立つと、まず耳に届くのは、絶え間なく繰り返される波の音です。引いては寄せるそのリズムは、どこか人の呼吸や心拍と似ていて、自然とこちらの呼吸もゆっくりと整っていきます。
この「自然のリズム」は、私たちの神経にとって非常に心地よいものだと言われています。医学的にも、海のような一定のリズムは副交感神経を優位にし、ストレスをやわらげる効果があるとされています。
言葉ではない癒しが、そこには確かに存在しているのです。
「1/fゆらぎ」がつくる癒しの構造
波の音や風のそよぎ、小川のせせらぎ、焚き火のゆらめき。これらは私たちが「心地よい」と感じる自然の音や動きですが、実はすべてに共通しているのが「1/fゆらぎ」と呼ばれるリズム構造です。

これは、規則性と不規則性がちょうどよく混ざり合った揺らぎのことで、人間の生体リズム(呼吸や心拍)とも親和性が高いとされています。
規則的すぎると退屈に、不規則すぎると混乱を招く。そのちょうど中間の“ゆらぎ”こそが、私たちに安らぎをもたらしているのです。
海の波音もまた、この1/fゆらぎを持つ音の代表格です。繰り返しのなかに微妙な変化があるからこそ、聴くたびに新鮮で、心が整っていく感覚が生まれるのではないでしょうか。
揺れを否定しない自然の在り方
心が揺れるのは、自然なこと
私たちは、強くいようとするときほど「揺れる心」を否定しがちです。けれども屋外にいると、自然そのものが常に揺れていることに気づきます。
風が吹き、草木がざわめく。波が寄せ、崩れ、引いていく。自然は常に動いていますが、それでも確かな心地よさと安定感を感じさせてくれます。
それはきっと「揺れていても大丈夫だよ」と教えてくれているからのようにも感じます。
揺れの中にあるリズムを感じる
波の動きに目をこらしていると、そこには“揺れ”の中に潜む秩序のようなものが見えてきます。風が引き起こす波は、幾重になりながらも、全体としては一つのまとまりをもって動いています。
それは、私たちの心の状態とも似ているのかもしれません。喜びと不安、焦りと安心が入り混じりながらも、ちゃんと全体として“生きている”リズムがそこにある。
ゆだねる勇気
「自然のままに流れること、それが最も深い強さである。」
老子(Laozi/中国/哲学者/紀元前6世紀頃)

この言葉は、「力むこと」や「抗うこと」ではなく、自然の流れに身を委ねることの大切さを教えてくれています。
海のリズムに身を任せるように、自分の心の動きにもゆとりを持って向き合っていけたら、そこにこそ、ほんとうの穏やかさがあるのかもしれません。
心の波を静かに見つめる時間
自然のリズムは、私たちの内面にやさしく語りかけてくれます。それは、「揺れてもいい」「止まらなくてもいい」「ただ、今ここにいていい」という無言のメッセージです。
もし今、心がざわついているなら、ぜひ一度、自然の中へ足を運んでみてください。波の音に身をゆだね、風を感じながら、ただその場所にいるだけで、心の波もすこしずつ穏やかになっていくのではないでしょうか。
参考文献・参考資料
老子『道徳経』講談社学術文庫 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000191300
波のリズムと1/fゆらぎに関する研究(日本環境心理学会)https://jepa.gr.jp/study/1overf_nature
1/fゆらぎの科学と応用(日本生体医工学会誌)https://jbmes.jp/articles/1overf_therapy
自然環境音と心の安定におけるゆらぎの役割(環境音響学ジャーナル)https://soundscapestudy.org/research/1overf_sounds